【適応障害の概念】 適応障害とは、ストレスによって、気分の落ち込み、意欲低下、不眠や身体症状が出現している状態で、最もよく見られる疾患の一つです。 医学的には、個人的不幸・心理社会的ストレス因子に対する短期間の不適応反応のことで、ストレス性障害の一つです。通常、ストレスになっている原因が消失すれば、状態は速やかに改善し、新たな適応を得ると考えられます。アメリカの診断基準(DSM-5)では、症状はストレス因子の始まりから3ヶ月以内に出現し、ストレス因子の消失後6ヶ月以内に改善するとされています。また、ストレスの原因が持続する場合には、適応障害も引き続き持続します。 診断基準では、ストレスの性質や強度は特定されていません。日常的な出来事が思いがけなく大きなストレスとなり、強い症状が出現している状態と言えます。また診断基準(DSM-5)では、ストレスにより社会適応に支障を来していても、統合失調症や気分障害、神経症性障害が確認された場合、適応障害とは診断されません。
【疫学】 DSM-IV-TRによれば、適応障害の一般人口における有病率は2-8%と推定されています。男女比は2:1、独身女性に多く、入院患者にも多くみられると報告されています。DSM-5によれば、精神科治療を受けている人のうち、適応障害を主診断とする人の割合は5-20%とされていて、一般的にも多くみられる疾患(状態)です。
【症状】 適応障害の症状は、症状はストレスや状況、本人の性格によって様々ですが、主に以下の状態に大別されており、これらの何れかが目立った状態、またはいくつかが混合した状態となって現れます。抑うつ気分を中心とするケース;気分の落ち込み、涙もろさ、意欲低下など不安症状を中心とするケース;動悸、焦燥感、神経過敏、緊張、怒りなど身体症状を中心とするケース:起床困難、頭痛、めまい、動悸、倦怠感、腰背部痛、感冒様症状、腹痛など うつや不安症状が強い場合は、ストレスに直面しそのことを考えたりすると、憂うつ、喪失感、絶望感が現われ、職場(学校)で突然、泣く、仕事(勉強)への意欲が失われ効率が落ち、集中力の低下からミスが現われることが見られます。 ストレスが身体に現われる場合は、頭痛、倦怠感、腰背部痛、感冒様症状、腹痛などにより、活動性が制限されてしまい、さらに内科などの病院受診を繰り返すこともあります。その一方で、ストレスの原因から離れている時間(休日など)は症状が軽くなる場合もみられます。
【適応障害とうつ病の違い】 鑑別では、うつ病との区別が必要です。適応障害は、うつ病と似た症状が出現しますが、うつ病では、抗うつ剤を用いて、長期的な治療が必要になることが多いため、適応障害とは経過や治療が大きく違ってきます。うつ病では、悲哀感、自責感(環境のせいではなく自分が悪いと責める気持ち)、気分の日内変動(朝に抑うつ気分が強い)、今まで興味のあったものに全く興味がなくなることなどが特徴です。また、適応障害によるうつ症状では、ストレス要因に対して予想以上に抑うつ気分が強くなり社会生活に支障が現われた状態ではありますが、気持ちが変化する力はまだ保たれており、ストレス要因が消失すれば、症状は速やかに(6ヶ月以内)軽減する例がほとんどです。それに対して、うつ病による抑うつ気分は、問題となっていた出来事が解決しても、安心できず、様々なことが憂うつに感じられ、時間が経過してもその状態が持続し、気持ちの変化が認められません。

【診断基準】・DSM-5による適応障害の診断基準ですA. はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現B. これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。(1) そのストレス因子に暴露されたときに予想されるものをはるかに超えた苦痛 (2) 社会的または職業的(学業上の)機能の著しい障害C. ストレス関連性障害は他の精神疾患の基準を満たしていないこと。すでに精神疾患を患っている場合には、それが悪化した状態ではない。D. 症状は、死別反応を示すものではないE. そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない
適応障害の予後は、ストレス要因の解決や薬物療法など、適切な治療が行われれば良好です。治療の中でも特に、環境調整が重要です。患者さんのストレス要因となっている事柄を明確にし、必要であれば家族や職場の方にも治療に同席していただくことで、サポート体制を作ってゆきます。ストレス要因を解決しながら、少しずつ前に進んでゆくことが治療の中心になります。従って、患者さんやサポートをする方達も、不安や苦痛、苦労を伴うことが予想されますが、そのことが症状の改善には必要であると考えられます。

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